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第10話 帝人様の秘書・前編

ผู้เขียน: 八月 猫
last update วันที่เผยแพร่: 2026-07-21 18:37:22

 面接当日、私は皇グループ本社の前で足を止めた。

 空を映す黒いガラスの外壁は、見上げても最上階まで目で追えない。正面玄関へ吸い込まれていく人々は皆、歩く速度まで決められているように見えた。

 つい数日前まで、私は結婚後の新居に置く食器を選んでいた。

 それが今は、国内有数の企業グループへ再就職の面接に来ている。

 人生の方向転換が急すぎて、まだ自分のことではないような気がする。

 けれど鞄の中には履歴書があり、着ている紺色のスーツも今日のために選んだものだ。役員秘書として働いていた頃に何度も袖を通した服なのに、結婚を理由に退職してからはクローゼットの奥へしまったままだった。

 襟元を整え、正面玄関をくぐる。

 広いエントランスには磨かれた石材が使われ、靴音が高い天井へ静かに響いていた。

 受付で名前を告げると、ほどなく榊原さんが現れた。

「お待ちしておりました、倉橋様」

「本日はよろしくお願いいたします」

「こちらこそ。先にお伝えしておきますが、帝人様からは採用するよう命じられております」

「やはりですか」

「ただし、私の評価には一切影響いたしません。能力が基準に達していなければ不
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